AMD A-Series APU "Trinity" A10-5800Kでハードウェアエンコードをしてみた。
短時間で済ませたいときのカジュアルなエンコードなら、使い勝手も含めて結構良いと思う。外付けグラフィックカードなしの低価格なPCでここまで出来るところが良い。
今回使用したビデオ変換ソフト『MediaShow Espresso 5.5』(CyberLink)では、Radeon HD
6000世代以上のGPUで高速処理が可能なAMD App Acceleration機能やNVIDIA CUDAといった、グラフィックスカードを用いた高速なハードウェアエンコードが可能になっている。(現行のMediaShow Espresso 6.5ではIntel Quick Sync Videoにも対応)
■AMD A-Series APU "Trinity"は、侮れない。AMD A-Series APU "Trinity"は、CPUとGPUをひとつにしたもの。最新の"PileDriver"4コアCPUとRADEON HD 6000世代の"Northern Islands"をベースに32nmのプロセスルールで回路設計を微細化してカスタマイズしたGPU、RADEON HD 7660Dを搭載している。
GPUは、元々は一世代前のGPUだけあって、侮れない性能を持っている。
更に、Radeon HD 7000シリーズ外付けグラフィックスカードと同様に、「AMD HD Media Accelerator」と名付けられた、ハードウェアのデコーダーとエンコーダーを搭載している。
AMD HD Media Accelerator (ハードウェア デコーダー&エンコーダー)
デコーダー:UVD(Unified Video Decoder) 3
エンコーダー:VCE(Video Codec Engine「AMD Accelerated Video converter」)
したがって、"Trinity"のGPUは、RADEON HD 6000世代の"Northern Islands"ベースじゃないかとは言っても、HD 7000世代のようにハードウェアデコーダーとエンコーダーが追加搭載され、設計自体も40nmから32nmへ微細化されている。一概にHD 6000とも言い切れない、カスタマイズされたGPUになっている。
■安いからパフォーマンスもそれなりかというと、そうでもない。Windows 7で"AMDに最適化されたアプリ"を使えば、予想外の高い満足感を得られる。A10-5800Kでは、MediaShow Espresso5.5と使うと、4コアCPU、Open CL、AMD HD Media Accelerator、RADEON HD GPUの連携により、安価ながらも高速なハードウェアエンコードが手軽に利用できる。つまり、コストパフォーマンスが非常に高い。エンコードに関して、IntelやNVIDIAを選択しない、安さを求めてAMDを選択したとしても、やり方によっては(AMD対応の物を使ってやれば)、思っていたよりも意外と性能が高いじゃないかという実感を得られる。
■AMDのユーティリティはXP非対応ばかりなので、XPも良いけど、7で使う方がずっとずっと面白い。その他、AMDは、このような便利なユーティリティにおいて、Windows XPでは非対応なものが殆どだ。したがって、機能を存分に使いたい場合は、Windows 7で使うことが大切。
個人的な自作経験で感じたことは、前世代"Llano"で組んだときにWindows XPを使ったところ、面白いエクスペリエンスがあまり得られずちょっとつまらないなと感じたので、"Trinity"では、重い腰を上げてWindows 7を新規導入に至った。
■ソフトウェアエンコード?それとも、ハードウェアエンコード?どちらも一長一短。ケースバイケースで考える必要がある。エンコードは、ソフトウェアとハードウェアのふたつがあるが、それぞれにメリットとデメリットがある。
簡単に書くと、
ソフトウェアエンコードは、ファイル容量が小さく高画質な物が作れる反面、CPUの性能に強く依存し、結果としてそれがエンコード時間に大きく影響する。
ハードウェアエンコードは、専用のプロセッサやGPUを使うことでエンコード時間がとても短く済んでしまう。しかし、映像品質を重視した場合は出来上がりのファイル容量がとても大きくなってしまう。
どっちが良いのかは一概に言えないところがある。
作成時には、エンコード時間、デバイスへの投資金額、消費電力がもたらす発熱や電気代などが生じる。
作成後にYouTubeへのアップロードやポータブルデバイスなどへ転送する際には、転送時間やストレージ容量の制限が生じる。
ケースバイケースで使い分けるのが良いのだろうと思う。
■ハードウェアエンコードの一番の魅力は、短時間で済むこと。品質を重視するとファイル容量がデカくなるのがデメリット。ハードウェアエンコードは、個人的にNVIDIA CUDAによるGPUや東芝 SpursEngine(PS3のCELLがベース)という専用プロセッサを使用した経験がある。そして、今回はRADEONによるGPUが活かせるApp Acceleration(旧ATI Stream)機能を使ったみた。
それらの経験を踏まえて言える確かなことは、
ハードウェアエンコードは早く済むけれど、綺麗な画質で観たいので品質を重視するとファイル容量がデカくなることだ。
■PCのシステム構成について使用したPCは、A10-5800KとA85Xチップセットマザー、チップセットドライバーとグラフィックスドライバーは最新の12.10を使用した。特に設定などチューニングはしていない「普通に組んだ」状態。
■システム構成メインプロセッサ:AMD A-Series APU A10-5800K
グラフィックスドライバー:Catalyst 12.10
チップセットドライバー:12.10
CPUクーラー:水冷一体型 CORSAIR Hydro Series H50 (CWCH50)
マザーボード:GIGABYTE GA-F2A85X-UP4 (rev. 1.0) BIOS:F2(Default)
チップセット:AMD A85X FCH
メインメモリ:DDR3-1600 4GB x2 (CL=9-9-9-28)
CFD ELIXIER Heatsink 4GBx2 (W3U1600HQ-4G)
ストレージ0:SSD 120GB Intel SSD 330 Series (SSDSC2CT120A3K5)
ストレージ1:HDD 500GB Seagate ST3500410AS
ストレージ2:HDD 2TB Seagate ST2000DL003
光学ドライブ: Blu-rayドライブ (PIONEER BDR-203)
拡張カードスロット:PT2 Rev.A (PCI)
拡張カードスロット:SKnet MonsterX3 (PCI Express x1)
電源ユニット: 700W 80PLUS (SEASONIC M12 Series SS-700HM)
OS: Windows 7 Professional 64bit SP1
■ソフトウェアとファイルの位置使用するソフト:Cyberlink MediaShow Espresso 5.5
ファイルの位置
ビデオ変換ソフト:ストレージ0 (OSと同じ)
ソースファイル:ストレージ2 (HDD 2TB)
書き出し先:ストレージ1 (HDD 500GB)
■MediaShow EspressoでGPUハードウェアエンコード。細かい設定は出来ないが、手軽に使える点が良い。安価で、手早く、簡単、高画質なハードウェアエンコードソフト。あまり知られていないと思うのだが、使い勝手とパフォーマンスから考えると、恐らく最強クラスなんじゃないかと感じた。但し、設定については、細かいことが出来ない。
ビデオ変換ソフト、CyberLink 『MediaShow Espresso 5.5』。
*ここで使用している『CyberLink MediaShow Espresso 5.5』は、AMD A-Series APU "Llano" A8-3870Kのバンドル品で、以前に『AMDの「APUって何?」を学ぶ勉強会』で頂いた体験ブログ記事作成用部材となります。
環境設定もたったこれだけ。言語設定、同時変換処理数(1または2)、ハードウェア デコードの有無の3つ。勿論、ハードウェアデコードは有効になっている。
今回エンコードに使うのはTV録画ファイルで30分アニメを予めCMカットしたもの。
TMPGEnc MPEG Editor 3 Ver. 3.4.3.155でCMをカットし、トランスコード。
映像設定は、レート調整モードがVBR(固定品質)で、品質は100。
音声設定は、Dolby Digital 192Kbps。
ファイル容量は、1.55GB。
上図のグラフは、出来上がったファイルのビットレートを表している。
エンコードするビデオファイルをドラッグ・アンド・ドロップする。
■手動設定を使えば、PS Vita用に高画質のビデオを作成することが可能。但し、ファイル容量はデカくなる。このソフトにはPS Vita用の設定はないので、手動で設定する。
MPEG2-PS形式で解像度1440x1080iの編集済みTV番組(オーディオはDolbyDigital 48kHz 192kbps)を、H.264(MPEG4-AVC)形式で解像度1280x720p、ビデオ6Mbps、オーディオ48kHz 256kbpsのビットレート設定でエンコードする。
個人的には単純にブロックノイズのない綺麗な映像が観たいので、品質を重視する。よって、出来上がりのファイル容量は度外視される設定だ。
設定は全般的に細かい設定が出来ない。飽くまで簡単操作しか出来ない。
勿論、ハードウェアエンコードは有効に設定されている。
ハードウェアエンコードは、エンコードそのものは短時間で済むメリットがあるが、映像品質の面では、ソフトウェアエンコードと比べてガッツリとビットレートを高くしないと良い品質が得られないのがデメリットだ。そうしないとシーンチェンジや動きが多い場面でブロックノイズなど出てしまうのだ。
エンコード中。
ユーティリティソフト『AMD System Monitor』で、CPU、GPU、メモリの使用率をグラフで見つつ、ワットチェッカーplusで消費電力も見てみた。
■ハードウェアエンコード中は、大体CPUが30%台、GPUが60%台の使用率だった。APU "Trinity" A10-5800KのRADEON HD GPUの機能App Acccelelationにより、CPUの負荷は低め。グラフにある通り、負荷のパーセンテージは大体CPU30%台、GPU60%台といったところだ。負荷が低めで余裕があるので、この「APU」という安価な「CPU+GPU」という一風変わったプロセッサのコストパフォーマンスは、非常に良いと感じた。
■ハードウェアエンコード中の消費電力は106W〜116W。概ね110W程度だった。消費電力もワットチェッカーplusで目視していると106W〜116Wで、概ね110W程度だった。
因みに、アイドル時に搭載しているHDD2台が電源OFFのときは、40〜42W。
*消費電力については、そのPCに搭載されたハードウェアデバイスの構成によって異なります。上記の消費電力数値は、私が組んだ自作PC1台分の消費電力です。ソースファイルの置かれたHDDと書き出し先のHDDのHDD2台、今回のエンコード作業に直接関係のないデバイスも搭載している状態です。したがって、PCによっては、もっと消費電力を低く下げることが出来ると思います。
エンコード終了後。
■エンコードは、高速。23分39秒の1440x1080iのTV番組をPS Vita用に1280x720pに変換。
掛かった時間は10分6秒だった。再生時間の42.7%と短時間で完了した。
エンコードされたファイルのビットレートグラフ。設定通り平均6Mbpsとなっている。
ファイル容量は、1.03GB。
やはり、ハードウェアエンコードでは、綺麗な映像を観たいとなるとどうしてもファイル容量はデカくなってしまう…。TMPGEnc VideoMastering Works 5で960x544の2パスエンコード(ソフトウェアエンコード)と比べると約3倍もデカい。その代わり、短時間で消費電力も余り掛からない。
■コストパフォーマンスは良いと思う。カジュアルに手早く簡単に高画質と考えれば、AMD A-Series APU "Trinity" A10-5800KとMediaShow Espresso5.5の組み合わせというのは、個人的には、これほどコストパフォーマンスに優れた物もそうそうないんじゃないかと思うので、満足している。
*ここで使用している自作PCに搭載されたプロセッサーのAMD A-Series APU "Trinity" A10-5800KとマザーボードのGIGABYTE GA-F2A85X-UP4 (rev. 1.0)は、『AMDの「APU新製品」に関するブロガー勉強会』にて、体験ブログ記事作成用に頂いた物を使用し、その他の必要なハードウェア、ソフトウェアなどの機材を購入した上で作られたものです。また実際に普段メインPCとして使用しています(2012/11/25現在)。
MediaShow Espresso (CyberLink)
http://jp.cyberlink.com/products/mediaespresso/overview_ja_JP.htmlMediaShow Espresso バージョン比較表 (CyberLink)
http://jp.cyberlink.com/products/mediaespresso/compare_ja_JP.htmlデスクトップPC向け AMD アクセラレーテッドプロセッサー A10 (AMD)
http://www.amd.com/jp/products/desktop/apu/mainstream/Pages/mainstream.aspx#6AMD VISION エンジン (AMD)
http://www.amd.com/jp/products/technologies/Pages/vision-engine.aspxAMD App アクセラレーション 一般ユーザー向け (AMD)
http://www.amd.com/jp/products/technologies/amd-app/consumer/Pages/consumer.aspxAMD System Monitor (AMD Game)
http://sites.amd.com/us/game/downloads/amd-system-monitor/pages/overview.aspxGIGABYTE GA-F2A85X-UP4 (rev. 1.0) (日本ギガバイト)
http://www.gigabyte.jp/products/product-page.aspx?pid=4343*マザーボードは、製品毎に価格や機能、不具合の有無、今後のBIOSアップデートなどのサポート面に期待を持てるかなど、購入時は充分に吟味することをお奨め致します。